命題論理組曲

新曲ができました。

【ニコニコ動画】【自作曲】命題論理組曲【ピアノ】

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大学院での本格的な勉強が始まる前に論理学の基礎くらい予習しておこう！という形で始まったセミナーで、その第一歩と言ってもいい命題論理に頭をやられていた時期に旋律を思いついたのがきっかけです。
ぶっちゃけ基礎中の基礎の領域なんですが、当時はこの時点でかなりいっぱいいっぱいでした。
初めに完成したのが4曲目冒頭2小節の主題で、どうしてこんなものが産み落とされたのか未だに分かっていません。

以下、命題論理について触れて、この曲の構成について書いておきます。

※以下、厳密性に欠ける記述が多数存在します。



・命題論理について

　命題とは、「○○は××である」や「□□ならば△△である」といった単純な形の、真もしくは偽のどちらかの(ある種の)主張を言います。命題論理はこれらの命題がどのような体系をなすかを考察した学問です。
すでにこの分野は研究が終わっていて、命題論理を形成する公理とその他の規則が完全に体系化できています。

体系の作り方はいくつか流儀があるのですが、それはどれも「公理」と「推論規則」からなります。今回はヒルベルト(1862-1943)のものを使います。

まず命題ですが、変数(φ,ψ,χ,...)と論理記号→および￢、そして括弧( )のみを組み合わせたものを命題と定義します。

→は「if ... then」(もし…ならば)、￢は「not ~~」(~~でない)に対応します。


公理とは、最初から真と言ってよい主張の集まりです。言い換えると、公理として定められた主張は、無条件に真とされます。
当然なんでもかんでも公理にしていいわけではなく、公理に矛盾があるとあらゆる命題が真になることが知られています。そんな面白くない体系に興味はありません。
ヒルベルトの公理系では、公理は3つあります。3つしかないとも言います。

・φ → ( ψ → φ )
・( φ → ( ψ → χ )) → (( φ → ψ ) → ( φ → χ ))
・(￢ψ → ￢φ ) → ( φ → ψ )

また推論規則とは、文字通り推論を行っていい規則を表します。
ヒルベルトの公理系では、2つの命題「φ」「φ → ψ」から「ψ」を推論することだけが許されます。


以上のルールで、命題論理は体系化されます。
もっと言うと、どんな命題でもそれが記号のルールに従った「命題」であるならば、それ自身かその否定のどちらかが必ず証明できます。


これ以上は専門書をご覧ください。




・曲の構成について

上記の3つの公理と推論規則から、インスピレーションのみで主題を構成し、しかるべき肉付けを施したのが今回の曲です。動画のコメントでも言及しましたが、ジャンル的には即興曲なのでぶっちゃけ数学的な内容は演奏に必要ありません。
いちおう私の脳内では明確にリンクしているのですが、特に論理的なリンクでもなく、なんとなくのイメージだけのものですので、本当に気にしないほうが演奏のためになると思います。

各曲のモチーフについてですが

公理１：9小節目からのメロディが一応モチーフにあたります。あまりモチーフ然とはしていないため気にしなくてもいいかもしれません。しいて言うなら全体の雰囲気が公理１のイメージとリンクしています(私の中では)。

公理２：冒頭の和音がモチーフに相当します。あとは全部オマケみたいなもんです(暴論)。

公理３：4小節目からのメロディ、と思いきや、オスティナート的な冒頭からの伴奏音型がモチーフです。メロディはオマケです(暴論)。

推論規則：先述の通り冒頭2小節がモチーフであり、この曲を作る核となったモチーフです。とはいえ、全曲を通して音楽的な核かというと全くそんなことはありません。いちおう4曲目中は音楽的にも核とはなっています。

テンポや曲想は動画の通りのものを想定してはいますが、楽譜ではそれを書くべき場所にあろうことか公理やら推論規則やらを書いているため、つまりなんでもありです。辛うじて4曲目には「lent」「a tempo」なんかは書いていますが。




余裕があれば別記事でもう少し音楽的なこの曲の解説もします。